しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

寒い3月の日

寒い3月の日。
耳まで隠れる帽子をかぶって会社へ向かう。
東京電力からは節電の要請。ちょっと違和感がある。僕らだって東京電力に要請したい事があるよ。
でも、きっと自分の組織だって多くの人には同じように映っているかも。どこか上から目線の組織。

昔、知らない人と呑む事が多かった時、
会社名を伝えると、絡まれたり文句を言われる事があった。そういう時は名前ではなく、社名で呼ばれた。

「おいNHK」「いや、僕は前田です」

いくら年上だからと言って、僕の組織がイマイチだとしても、初対面でそれはないよなと思った。
思いつつ、これはきっと足を踏んでる方は気づかない、いつもの奴なのかなとも思った。

踏まれてる側しか痛みはわからない、的なやつ。
たぶん僕も誰かの足を踏んできた。
そんな時、僕もあんな感じだったのかな、
何か大きなものに立ち向かっているような、
鼻息の荒い顔をしていたのかな。

(正義の側にいると思う時、
 僕らはとても傲慢になる)

寒い3月の日。
耳まで帽子をかぶってAirPods で音楽を聴く。
二重にふさいだ頭の奥で、音楽が鳴っている。マスクで眼鏡が曇る。もっとボリュームを上げる。気持ちが内側に向かい、言葉が生まれてくる。僕はスマホを打つ。

誰かの言葉を思い出す。
「どんなに暗く救いのない表現だとしても、それを作って発表することは、本質的にポジティブな行為だ」

傷ついた経験によって、傷つけたかもしれない自分に気づく。それも何かの連鎖。何かが回ってる。連環する円の中で、エネルギーがたまっていく。

正しいことと、そうでないこと。
僕に責任のあること、そうでないこと。
誰かに責められているような気持ち。
誰かを断罪するベクトル。
原因があり結果があるけれど、結果がまた原因となり、グルグルと回っていく。誰もが何かの結果であり、何かの原因でもある。出口を失った正と負のエネルギーが、よくない感じでたまっていく。

そんなものをすべて、
遠心力で遠くへ飛ばしてしまいたい。
円盤投げか、ハンマー投げのように。
思いが凝縮して、変なエネルギーになる寸前に、
広々としたグラウンドに解き放ちたい。

力をぎゅーっと凝縮して、ばっと空に放つ
重いハンマーは、空へ飛んでいく
僕の言葉は一瞬で形を変えて、空を飛んでいく