しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

呑み会の夢

楽しかった呑み会のことは 何も覚えていない
楽しければ楽しいほど いつも呑み過ぎたから何も覚えていないんだ
でもそれは魔法のような時間
君が感じていたことを 実は僕も感じていて
僕がうまく言えなかったことを 君が見事に言葉にした
再会した戦友のように力強く握手 そしてもっと強めの酒へ
3時間や4時間はあっという間に過ぎていった

僕らは交互におかわりして
閉店時間や終電時間と駆け引きした
また最初からやり直すのは面倒くさいから
どこまでも呑んでいたかった

誰も覚えていないから
翌朝スマホで写真を見つけると 撮った方も撮られた方も新鮮
(それにしても、いい顔で笑ってるな)
何か粗相がなかったか 探り合うようにメールをやり取りして
「ほとぼりが冷めたら」なんて悪事のような約束をまたかわす

渋谷 新宿 代々木上原 三軒茶屋
錦糸町 南千住 東陽町 門前仲町
中野 高円寺 西荻窪 吉祥寺
上野 新橋 秋葉原 北千住

街の名を呼べば思い出す 覚えていない無数の夜のことを
並んだホッピーの空き瓶 食べ終わった串焼きの串
油で汚れたメニュー タオルを頭に巻いたマスター
すべては美しい夢だったかのように