しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

格闘技の青春

UWFの本はたくさん読んできたけれど、この本が一番です。

図書館で見つけて、一気に読んでしまいました。

 

こんなにフェアで、純粋な格闘技本は初めて読みました。

UWF外伝というタイトルだけど、内容は平直行の自伝です。

 

U.W.F外伝

U.W.F外伝

 

 

佐山サトル前田日明シーザー武志石井館長という「錚々たると」いうレベルを超えた人たちの元で練習し戦った稀有な格闘家、平直行グラップラー刃牙のモデルにもなりました。

 

様々な団体を飄々と渡り歩く、帰国子女のような不思議な佇まいには現役時代から興味があったのですが、その個性がどのように育まれたのか、そして魑魅魍魎が跋扈するジャングルのような格闘技界をどう生き抜いたのか。
自分自身と格闘技界をクールに俯瞰しつつ、その時々の生々しい葛藤も率直に語っています。

 

本を出す前に、前述の錚々たる人たちに「本を出します。原稿も事前に見せます」と伝えている事実だけでも(つまり、そう言える関係性を皆と持てているということ)この人の「真っ当さ」が伝わってきます。

 

憧れた佐山サトルに信頼してもらえなかった頃の話や、シュートボクシングがうまくいかなかった頃のシーザー武志と牛丼を食べた話など、エピソードの一つ一つが切なくて、輝いてます。

 

デタラメではあったけど愛すべき人ばかりだった、水滸伝のような、男塾のような、あの頃の格闘技界の英雄たちの姿が、その一人でもあった平直之の筆で蘇る。そして、絶対に彼は嘘をついていないだろうなと信じさせる何かがあります。

 

僕が好きだったリングスと前田日明の業績について、

彼の試合がいわゆる「プロレス」が多かったことも含めて、

正当に評価している唯一の本だと思います。