しあさっての方向

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書評「不屈の棋士」

観戦記者による、棋士へのインタビュー集。
タイトルから、難病とか逆境を乗り越えた棋士の話かとも思いましたが、違いました。

コンピューター将棋や電王戦の戦いに、どう向き合っているのかを
トップ棋士にストレートに聞くインタビュー本です。

不屈の棋士 (講談社現代新書)

不屈の棋士 (講談社現代新書)

 

 かなり核心に近い質問を次々と投げかける筆者と
答える棋士がまっすぐ受け止めていく様が、なかなか気持ち良いです。

「この人なら、いい加減な切り取り方をしないだろう」という信頼関係ができていることが
棋士側の答えから想像できます。
テーマは、コンピューター将棋なのですが
それと向き合う棋士の将棋論や、棋士論、そして人生論が浮かび上がってくる様が圧巻です。

将棋とは何か、勝負とは何か、棋士とは何か、
また限りある棋士人生をどう生きようとしているのか。
コンピューター将棋という異物の侵入は
それぞれが、己に問い直すことを必然的に求めたようです。

人間がコンピューターが敗れてしまう現実にさびしさや、やり切れなさを感じることはありますが
このインタビューを読んでいると、
コンピューターの出現を、それぞれのやり方で乗り越えようとする姿が伝わってきます。

そして、その異物を己の将棋の進化につなげようとする、真摯な姿に胸打たれるのです。