しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

スティーブ・ジョブスの演説

亡くなったスティーブ・ジョブスの演説を聴いて、思った事がある。


自分の信念を貫いて、生きる事の清々しさ。
そうやって、この時代を走り抜けた人がいる事への驚き。
(しかも世界のトップランナーとして)
世界の全ての若者が、彼の言葉を読んで
勇気を持って、真っ直ぐに生きていってほしいという思い。


でも、自分に正直になれば
それだけの思いでは終われない。

来月40になる自分。
もうずいぶん長く生きてきた自分。
もう既に、数多くの妥協や数多くの誤魔化しを
人生のいくつかの場面でしてきた自分。

そういった自分は、
彼の真っ直ぐなメッセージを、どう受け止めて生きていけばいいのだろうか
そんな気持ちだ。

そんなにひどい生き方だとは、思わない。
でも
彼の言葉を、まぶしく感じてしまう程度の欺瞞は、
人生の中に、抱えてしまっているのだ。
それは、間違いない。


全てを無かった事には、したくない。
今の自分を棚にあげて、説教したりするのは最悪だ。

(すでに英雄と化しつつあるジョブスを評価する事で、
 「わかってる人」のように振る舞うのは簡単だけど)

でも、それならばどうする。

これからの人生を、できる限り誠実に
できる限り自分に正直に
生きていきたいという思いは、もちろんある。
彼の言葉を聞いて、その思いは強くなった。

しかし
そんな接ぎ木のような事が、人生において可能なのか。

不確かな大地の上に、
どんな種をまいても
どんな建物を建てても
結局は、不確かなものでしかないのではないか。
そんな気持ちでいる。


stay hungry,stay foolish.

その言葉は、今日、全世界の人達の心の中に響いたのだろう。
彼の生み出したコンピューターによって
そのシンプルで力強いメッセージは、多くの人々の心に勇気を与え続けるだろう。

でも・・・と僕は続けてしまう。
情けない弱音と言い訳になってしまいそうなので、書き続けられないけれど。


いつまでも定まらない人間の千鳥足の歩みも、
どこかにつながっていく事を信じて。