しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

nothing to lose

nothing to lose と
昔はよく考えた
失うものはない だから怖いものはない と

 

確かにあの頃
何も持っていなかった
失うものはなかった
(それでも 怖いものはあったけれど)

 

本当は
何かがほしかった
たった ひとつでよかった
これさえあれば 他に何もいらない
他のすべてを失ってもいい
そう思える 何かがほしかった

 

歳月が流れた
何かを得て 何かを失った
大切なものや そうでないものや
たったひとつのもののように 感じたものや

 

そして 今
もう一度 考える
今の自分について

 

中途半端に何かを得たから 怖さが生まれたのか
失う怖さを知って 臆病になったのか
だから今 そこそこの場所で
勝負を避けているのか と

 

もっと考える
いくつかの実績や信頼みたいなものは
失敗によって失われるのか と
あるいは
何かを失ったとして
その後に残る価値はないのかと

 

そして気付く
ほしかったものは 向こう見ずな勇気ではなく
怖れない心でもなく
失われることのないもの だったことに

 

そして そのいくつかを
自分は持っている と気付く
失われないものを 自分は持っている
きっと 誰であっても

 

nothing to lose
失敗しても
失われないものを
誰もが 持っている きっと
あるいは
それに気付くための 道のりなのかも