しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

旅立ちの季節

新人研修とかで若者と話す時は、よくこんな話をする。
「キャリアを重ねるほど、いい番組を作れるようになると思いがちだけど、そんなことないかもよ」と。
そしてこんな事も言う。
「ファーストアルバムが最高で、それを越えられないバンドなんてたくさんいるじゃん」と。

新人の頃に書いた提案は今でも覚えてる。
イデアを実現する力が無かったから、ほとんど日の目を見なかったけど、書いてる時のわくわくした感じは今でも覚えている。

「なんで今、これをやらなきゃいけないのかわからない」
ありがちな指摘を受けて、そんなの「今、僕がやりたいと感じたから」に決まってるじゃんと思った。
口には出せなかったけど。
でも、これは自分が偉くなるしかないなと思ったのは覚えている。

色々な事は、もうやり尽くされている気がする。
90年代だって、それはそうだった。
新しい演出もアイデアも、すでに誰かがやっているような気がして、年を取った人には全てお見通しのような気もしたりして。

そんな時は音楽を聴いた。
ブルーハーツだって、音楽的にはちっとも新しくは無かったよなと。
歌もさほどうまくなかった。
子どもでもわかる簡単な言葉で、シンプルなコードで、大きな声を出して、思い切りジャンプしたら、でもそれは新しかった。何が?

彼らほど恥ずかし気もなく、シンプルなことを力強くやる人は誰もいなかった。
つまり、気合いと開き直りかと。
本当はそれだけじゃないけれど、勝手に力付けられた。

(そして甲本ヒロト真島昌利でさえ、最初の3枚の先に行けたかというと謎だ)

僕の会社は、若者や元若者がどこかに旅立っていくのを見送る季節。
自信満々の人もいれば、不安そうな顔の人もいる。
僕は不安そうな人が好き。
いつまでもくよくよしながら、歩んでほしいなと思う。

簡単に、どこかにおさまらないで。