しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

傾聴ボランティア

コロナの前までは隔週で傾聴ボランティアをしていた
老人ホームを訪ねて お年寄りの話を1時間くらい聞く

多くの方は認知症的な感じで
いつも同じ話を繰り返す

楽しい思い出を話す人もいれば
辛かった話ばかりする人もいる

僕も酔っ払うと同じ話を繰り返すから
さほど気にならず 取材で培った珠玉の相槌を打った
たまに新しい話を引き出せると とても嬉しかった

空襲の話は多かった 疎開の話も
色々な記憶が失われるなかで 何が底の方に残るのか
そんなことを思いながら 相槌を打つ

表情に刻まれた年輪も それぞれに多様で 美しかった
何度会っても 僕のことは覚えてもらえなかったけど
何か役に立っていればいいのになと思いながら

傾聴を終えるとグループの人たちと反省会
メンバーは60代70代の人たち
僕もおそらくは同年代と思われていて
「まだ仕事してるの、立派ねー」なんて言われたりした

誰にも 大切にしているストーリーがあって
心の中で そのストーリーを繰り返している
何度も繰り返すうちにストーリーは磨き上げられていって
本当はどうだったかなんて もう誰にもわからないけれど
その人のなかでそうだったのなら 
それでいいじゃないかと思う

コロナの後は施設を訪問することができなくなって
お年寄りにも仲間にも会えなくなった
みんな元気かな