映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」感想
面白かった!
政治家に密着したストレートなドキュメンタリー。実はそれはある種のコロンブスの卵。
マイケル・ムーア的な過激さや森達也のような強い批評性はなく、ちょっと前の民放深夜のドキュメンタリー的なテイスト。でも目が離せない。
主人公の誠実な魅力や、そこに対する取材者の期待や、それ故に募っていくある種のもどかしさが淡々と綴られていく。
「なぜ君は総理大臣になれないのか」
シンプルなテーマは、見るものの中で徐々に醸成されていく。それは主人公の問題であり、野党の問題であり、日本の政党政治の問題であり、日本社会の問題でもあることに気付かされる。
監督自身のナレーションも含めて、演出には先進性はほとんどない。でもその実直な取材姿勢が主人公の姿と共鳴していく。
何より2003年から17年間の年月が圧倒的。
家族は成長し老いていく。政治家の家族である事を少しの諦めも含めて受け入れていく過程。妻の表情からは徐々に若さが失われていくが、豊かな年輪も増していく。
政治も人の営みであり、誰しも歳月から自由ではない。主人公が僕と同い年である事もあり、重く響いた。
人生をかけて成し遂げられるのはひとつかふたつのこと。全力を傾けても、届くかすらわからない。
小池新党騒動の中で壮絶に苦悩するクライマックスに心を痛めながらも、人生を賭けるべきものを見つけて、そこに殉ずることができる主人公の人生にある種の羨ましさも感じた。
井手 英策さんの感動的な演説も見所ですし、田崎スシローさんが、チョイチョイいい味出しているのもご愛敬です。