しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

間違い電話

門司に住むイラストレーターの黒田征太郎さんは北九州時代に何度か仕事でお世話になった。
今でも年に2、3回、黒田さんから電話がかかってくる。
でもそれは必ず間違い電話。どこかの前田さんと間違えてしまうらしい。

「いやぁ、すみません。いつもいつも」と味のある独特の声で申し訳無さげな黒田さん。でも僕は黒田さんの声を聞けて、とっても嬉しい。「また間違えてください!」と笑って伝える。

今日の昼に、また黒田さんは間違えて電話してくれた。
NHKの前田です!」「あらー、また、すみません」
僕は得意気に奥さんに伝える。鬱々とした気持ちが一気に晴れる。

きっと黒田さんは僕だけじゃなく、たくさんの人に間違い電話をかけてるんだろう。
そしてたくさんの人を幸せな気持ちにしてるんだろう。