しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

善と悪

悪は善より強い。

善が反省している間に、悪は前へ進む。
善が自らの偽善性に苦しんでいる間にも、悪は前へ進む。
善がたった一つの失敗によって自信を失っている間にも、悪は前へ進む。

悪に悩みはない。
悪に苦しみはなく、悪は矛盾しない。
悪に道徳や誠実さは必要とされず、悪と矛盾はむしろ友達だから。

弱き善が、自らの偽善性に苦しむ時、悪は手を差し伸べる。
弱き善が、自らの矛盾に苦しむ時、悪は手を差し伸べる。
弱き善は、自らの誠実さから善である事から逃げたくなった時、
悪は手を差し伸べる。

そして今や悪となった、かつての善は、
いまだに善を貫こうとする善を、率先して攻撃する。
なぜなら、
善は昨日の自分であり、まだ悪となっていない善は、その存在そのものが自らを責めるからだ。

善はいつだって、弱さを含む。
弱さは、他人を簡単に断罪できないやさしさであり、
強い断定の前に、口ごもってしまう優柔不断さでもある。


強くなりたいと思う。
しかし、強さの中に危険が含まれている事を、知っている。

正しくありたいと思う。
しかし、正しさを突き詰める過程にも別れ道がある事を、知っている。

負けていく戦いなのかもしれない。

それでも
自らの心を裏切らない生き方こそが、何よりも価値があると信じている。

たとえ、何回負けたとしても
気持ちを共にする仲間はいなくならないと、信じている。