しあさっての方向

本と音楽と酒と詩

詩が好きです

詩というと、
「こだまでしょうか」的な感じや、
にんげんだもの」的な何かを思い浮かべる方も多いかもしれないですが
それだけが、詩ではありません。

僕が考える「いい詩」とは、
自分の内面と向き合う時間を作ってくれる、そんな言葉です。

たとえば旅先の車窓で、
ぼんやりと色々な事を思い出して
感傷的になりながら、少しだけ前向きにもなっている。
そんな気持ちに導いてくれる、詩があるんです。


僕が好きなのは長田弘さん。
難しい言葉は一つも使わずに、
深く、心に響く詩を綴り続けてきた人です。

誰も訪れない森の奥にある、澄んだ水をたたえる湖。
そんなイメージです。
湖を見つめることは、自分自身を見つめることでもある。
そんなことも思い出させてくれます。


素敵な詩集を、何冊も出されている方ですが、
中でも「世界は一冊の本」をすすめます。
平野甲賀が装丁した、シンプルで力強い表紙の一冊です。


亡くなった身近な人への思いや
自分が敬愛する人の生き方を語りながら
長田さんが考える、
「人はどう生きるべきか」「素敵な事とは何か」が語られていきます。


 「人間は、一つの死体をかついでいる
  小さな魂にすぎない」

  さよなら、きみのことを
  ほんとうは何も知らなかった。
                (友人の死)

 
  食事の時間だから、今は食事をしよう
  私は私の人生の邪魔をしたくない

  なぜわれわれは、じぶんのでない
  人生を忙しく生きなくてはならないのか?

  ゆっくりと生きなくてはいけない。
  空が言った。木が言った。風も言った。
                (人生の短さとゆたかさ)



はやり廃りにとらわれずに、
大切な思い、忘れてはいけない考えを、自分のペースで紡ぎ出し
しっかりと推敲し、確かな本として編んで届ける。

その言葉の美しさはもちろん
そういった生き方を貫く、という事そのものが、
一つのメッセージたりえるという事に気付かされ、

自分も、自分の道を、自分のペースで歩んでいくしかないんだ。

そう思わせてくれる、詩人の一冊です。


今週のお題「おすすめの本」