聞く力
昔、実力のある格闘家が総合格闘技のリングに上がって惨敗をして、
晩節を汚す風景をたくさん見た。
世界にはたくさんの戦いの舞台があって、
一つの世界で最強な人が、違う舞台ではそうでもないんだなという事を、
僕たちは学んだ。
残酷な現実だとその時は思った。でも今は違う思いだ。
人生を賭けて一つの競技で戦って来た人がいたのなら、
その人を評価するのは、その土俵であるべきなのだ。
論争の時代には、人を言い負かす事が良しとされる文化には
もう、別れを告げたい。
たぶん今、必要とされているのは
人の言葉や、語られない人の思いを
聞く力だ。
名もない人の尊さや、敗れ去った人の見えざる日々を
思う力だ。
「いちばんつまらない人間だって
結構偉大なものさ
そいつを愛するのにも、人間の
一生じゃとても短すぎる」